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細胞外フラックスアナライザー XF Pro / XFe24

複合領域・汎用心血管領域神経科学領域腫瘍・がん研究

幹細胞研究における細胞代謝機能解析

細胞の年齢と起源、ドナーの多様性に加え、プロトコルの差異、増殖速度と培地の選択は、一貫性のないリプログラミングおよび分化効率に影響を与えます。細胞運命の変化が起こる前後に特徴づけられる代謝エネルギーの利用プロファイルは、代謝表現型を同定し、研究者が実施可能なリプログラミングと分化能を明らかにすることで、細胞機能の予測と確認を可能にします。

Seahorse XFテクノロジーは、細胞運命の遷移を予測し、モニターし、追跡することのできる、 信頼性の高い計測が可能です。これらの代謝の計測が非効率性を最小化するための指標として使用可能であり、分化とリプログラミング・アプローチを改善することができます。

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神経前駆細胞(NPCs)からの初期ニューロン分化過程における細胞遷移の同定

正常な末梢神経の発達過程の代謝要求性と異常な神経形成を引き起こしうる代謝障害を理解することは、神経前駆体/幹細胞 (NPCs) 分化過程と末梢神経成熟過程の新たな代謝のチェックポイントを提供し、ニューロパチーのためのターゲット治療ストラテジーの開発にもつながる可能性があります。

生きた神経前駆細胞(NPCs)と分化型ニューロンの細胞代謝の変化は、Seahorse XF テクノロジーを用いて調べることができます。これらの細胞のミトコンドリア機能は、XF Cell Mito Stress Testを用いて計測可能です。細胞の解糖活性は、細胞外酸性化速度(ECAR)を計測し、そこからプロトン流出速度 (PER) を算出する XF Glycolytic Rate Assayを用いて評価できます。特に、HEPESの緩衝能を加えたアッセイ条件を適用することにより、解糖のみに依存するPERを glycolytic PER (glycoPER) として評価することができます。



Figure 1:初期のNPC分化過程の感覚ニューロン分化タイムラインと細胞の代謝プロファイル。(A) iPSCsから機能的な感覚ニューロンまでの分化プロトコルを示す模式図。iPSCsからNPCsへの分化は、胚様体法を用いて行った。分化を経験したNPCsは、day 4で分離し、Ara-Cを含む / 含まない Matrigelコーティングした細胞培養ディッシュに再び播種した。(B) 初期のNPC分化過程の代謝の変化。ミトコンドリア呼吸と解糖を、初期のNPC分化過程の特定のタイムポイントにおいてそれぞれXF Cell Mito Stress TestとXF Glycolytic Rate Assay Kitで計測した。エラー・バーは平均±標準偏差 (n=26) としてレポートされた。

これらの細胞の代謝指標は、初期のNPC分化過程におけるニューロン遺伝子発現と一致していました(data not shown)。分化過程におけるニューロンのXF Cell Mito Stress TestとXF Glycolytic Rate Assayを用いた代謝プロファイリングは、この技術が神経分化タイムラインの間の細胞遷移を反映する代謝の遷移を同定するために用いることができることを証明しました。したがって、これらのアッセイは、末梢ニューロンの分化の道筋を予測するためのステップとなる計測を提供します。

Figure 2:初期のNPC分化過程での解糖からミトコンドリア呼吸へのシフト。ミトコンドリアOCR (mitoOCR) と解糖の PER(glycoPER) の比は、特定のタイムポイントにおけるXF Glycolytic Rate Assay データから GRA Assay Report Generator を用いて算出された。エラー・バーは平均±標準偏差としてレポートされた。(n=26; ****p<0.00001; ***p<0.0001; **p<0.001)

Application Note: Metabolic Phenotyping to Identify Cellular Transitions During Early Neuronal Differentiation from Neural Precursor Cells Using Seahorse XF Technologyより引用

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脂肪酸処理したヒト人工多能性幹細胞 (iPSC)由来のヒト心筋細胞のエネルギー代謝表現型の解析

ヒト人工多能性幹細胞 (iPSC) 由来の心筋細胞 (CM) (iPSC-CM) は、心筋再生、疾患モデル、薬剤評価のための有望な細胞ソースです。しかし、iPSC-CMは、未熟な胎児CMのような特徴を持ち、細胞構造や代謝などいくつかの点で成体CMとは異なっています。例えば、未熟なCMの主なエネルギー源は解糖系ですが、成熟したCMではミトコンドリアの酸化能力が高まり、脂肪酸のβ酸化が心臓の高いエネルギー需要を満たすための重要なエネルギー源となります。そのため、iPSC-CMsの未成熟さは、その応用を制限しています。

そこで、Horikoshi (2019) らは、脂肪酸を介して成熟したiPSC-CMが、成体CMに類似した代謝特性を示すかどうかを調べるため、解糖系とミトコンドリアの酸化機能、および異なる外因性エネルギー源 (脂肪酸やグルコースなど) を利用する能力をXFを用いて解析しました。その結果、成熟培地で培養したiPSC-CMは、コントロール培地で培養したiPSC-CMに比べ、ミトコンドリアの酸化能力、脂肪酸をエネルギー源として利用する能力、そして環境 (エネルギー需要、基質、ストレスなど) 変化に対してエネルギー基質を変化させる適応能力が高く、成体CMに似た特徴を持つことが明らかになりました。


Figure 1:1013 iPSC由来CMのミトコンドリア呼吸能力に対する成熟培地の影響。成熟培地では、基礎呼吸、ATP産生、最大呼吸、予備呼吸能に関連するOCRが有意に増加した。これらの主要なミトコンドリア酸化パラメーターの値が増加したことは、ミトコンドリアの成熟または酸化能力の向上を示している。


Figure 2:コントロール培地または成熟培地で培養した1013 iPSC由来CM (day34) のOCRに対する外因性脂肪酸 (パルミチン酸) の前処理の効果。
(A) iPSC-CMをパルミチン酸 (またはBSA) とエトモキシル (ETO) の両方で前処理した後、外因性脂肪酸 (パルミチン酸) の酸化を測定した。成熟したiPSC-CMでは、外因性のパルミチン酸を添加したときに、未成熟コントロールiPSC-CMよりも基礎呼吸量と最大呼吸量の両方で大きな変化を示した。
(B)、(C) 成熟培地で処理したiPSC-CMsは、2-DGではなくETOで前処理すると、パルミチン酸を介したOCRの増加が消失した。このことから、パルミチン酸を介したOCRの増加は、解糖ではなく脂肪酸の酸化に起因しており、これらの成熟したiPSC-CMは、成体CMで観察されるように、脂肪酸をエネルギー基質として利用してATPを産生する能力がより高いことが示唆された。


Figure 3:1013 iPSC-CMs (day34) の解糖系機能に対する成熟培地の影響。
(A-b、A-c) 成熟培地で処理したiPSC-CMsでは、解糖のECARレベル、解糖能、解糖予備能が有意に高くなった。(B) 未成熟iPSC-CMの解糖系機能に対するグルコース濃度の違いによる影響。各グルコース濃度の解糖機能には有意な差はない。(C) 成熟したiPSC-CMsでは解糖、解糖能、解糖予備能が、グルコースに対して用量依存的な反応を示した。ECARが高くなった理由としては、成熟培地で処理されたiPSC-CMは、脂肪酸源が損なわれたときに、エネルギー経路を脂肪酸のβ酸化から解糖に切り替える能力が高いことが考えられる。

Reference: Fatty Acid-Treated Induced Pluripotent Stem Cell-Derived Human Cardiomyocytes Exhibit Adult Cardiomyocyte-Like Energy Metabolism Phenotypes Horikoshi Y et al., Cells 2019 ()

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マウス出生後の神経発達過程の脈絡叢 (ChP) における代謝的な変化を明らかにした事例

脳脊髄液 (CSF) は脳を支える重要な役割を果たしており、水頭症のような異常な髄液の蓄積は、周産期の神経発達に悪影響を及ぼします。生後の臨界期におけるCSFのクリアランスを制御するメカニズムは明らかになっていませんでした。Xuら (2021) は、ATP依存性のNa+、K+、Cl-、水の共輸送体であるNKCC1がマウスの出生後の神経発達過程の重要な時期に、脈絡叢 (ChP) を介してCSFのK+クリアランスを制御していることを示唆しました。この研究の中で、XFを使用し、この時期のChPに代謝的な変化があることを明らかにしました。



Figure:Agilent Seahorse XFe 96を用いて、胚 16.5 日 (E16.5) 、生後 0 日 (P0) 、P7、および成体マウスの ChP の抽出物における代謝状態の指標となる酸素消費量をモニターし、基礎呼吸とATP産生量を算出した。E16.5 ChPは、試験したすべての年齢で基礎呼吸が最も低かった (h)。成体はE16.5 ChPよりも高いATP生産能力を有していたが、P0-P7 ChPはATP生産量あたりの代謝活性が最も高かった (h, i)。

Choroid plexus NKCC1 mediates cerebrospinal fluid clearance during mouse early postnatal development, Huixin Xu et al., Nat Commun. 2021 Jan 19;12(1):447. ()

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