【1. Background& Purpose】2019年から今日まで続くCOVID-19は徐々に安定化の兆しを見せているものの、未だパンデミックが完全に終息する兆しはない。近年では「Long-COVID-19(Post-COVID-19)」と呼ばれる感染後の長期的な後遺症も社会問題となっている。その主な症状としては慢性咳嗽、呼吸困難、肺機能の低下といったQOLを著しく低下させるものであり、これら肺機能の研究に関する社会的なニーズが高まっている。
現在、エアロゾル吸入による咳誘発試験において広く用いられている動物は覚醒状態のモルモットであるが
(1)、小動物の中では比較的サイズが大きく要求される試薬量も多い。またラットでは吸入刺激で咳が誘発されない報告があり
(2,3)、弊社で事前検討を行った際の結果と一致している。一方マウスはその取扱いの容易さや遺伝的バックグラウンドの豊富さから分野を問わず多くの研究に用いられるが、咳誘発試験においてはその体動の激しさなどから目視による咳の検出が困難である。
そこで本研究では、動物の呼吸機能や咳を自動で検出できるDSI社のWBP(Whole Body Plethysmography)システムを用いて、咳誘発試験におけるモルモットの代替動物としてマウスの有効性を検討した。加えて、投与前後のマウスの呼吸機能を比較・評価し、咳誘発物質暴露による呼吸機能への影響についても併せて評価を行った。なお、咳嗽の誘発物質としてカプサイシンやクエン酸が広く用いられるが、カプサイシンは臨床においてくしゃみを誘発する報告がある
(4)ことから、本研究ではクエン酸を使用した。
参考文献)
1)A. H. Morice, G. A. Fontana, M. G. Belvisi, S. S. Birring, K. F. Chung, P. V. Dicpinigaitis, J. A. Kastelik, L. P. McGarvey, J. A. Smith, M. Tatar, J. Widdicombe.
ERS guidelines on the assessment of cough.
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2)*1,Korpas J and TomoriZ:
Cough and Other Respiratory Reflexes.
pp15-179, Karger, Basel (1979)
3)*2,田中求, 河本定則, 丸山敬.
モルモットの喉頭へのクエン酸微量注入による咳誘発モデル.
p. 237-243, 日薬理誌(2002)
4)GeppettiP, Fusco BM, MarabiniS, Maggi CA, FanciullacciM, SicuteriF.
Secretion, pain and sneezing induced by the application of capsaicin to the nasal mucosa in man.
Br J Pharmacol. 1988 Mar;93(3):509-14. doi: 10.1111/j.1476-5381.1988.tb10305.x. PMID: 3370386; PMCID: PMC1853845. ※2023/2月 日本安全性薬理研究会 弊社発表ポスター