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細胞外フラックスアナライザー XF Pro / XFe24

複合領域・汎用心血管領域神経科学領域腫瘍・がん研究

がん・腫瘍研究:がん細胞の生体エネルギー代謝経路をプロファイリング!

近年、細胞の代謝を測定する技術の進歩は、がん治療のあり方を大きく変えました。現在では、代謝ががんの悪性化の重要な推進力であることが広く認められています。がん細胞の増殖には、より解糖系に近い経路へのアップレギュレーションや「代謝スイッチ」が必要であり、また、がん細胞の増殖に必要な急速なエネルギー要求を満たすために「ワールブルグ効果(Warburg Effect)」(好気的解糖)が必要だと考えられてきました。しかし最近では、一部のがんが優先してミトコンドリア呼吸を利用することも明らかになっています。がんの種類や環境に応じた多岐にわたる代謝表現型を同定し特異的な代謝ドライバーを理解することにより、がんに対する新たな創薬ターゲットの特定や治療法の発見を促進することが期待されています。

Agilent Seahorse XFテクノロジーはがん細胞の代謝をより深く理解するために、2つの主要な代謝経路である解糖系とミトコンドリア呼吸(酸化的リン酸化)をリアルタイムに測定することで、従来のエンドポイントアッセイでは捉えられなかった様々な代謝変化を定量的に分析・理解することが可能です。

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トリプルネガティブ乳がん (TNBC) 細胞株の代謝特性のプロファイリング

Guha et al. (2018) はいくつかのトリプルネティブ乳がん (TNBC) 細胞株の基底の代謝特性プロファイルを調査し、TNBC 細胞がミトコンドリアの遺伝⼦的および機能的な⽋陥と関連する特有の代謝表現型を持つことを⽰しました。これらの腫瘍形成の⽋陥はミトコンドリアの呼吸を減じて、腫瘍原性と関連する解糖への代謝スイッチを誘導しました。これらの結果は、代謝表現型をTNBC 患者の同定に⽤いることができ、変更された代謝が化学療法の改善のための標的になる可能性があることを⽰唆します。


Figure:TNBC細胞株と⾮TNBC細胞株は、異なる代謝表現型を⽰す。左:TNBC細胞株と⾮TBNC細胞株の基底の酸素消費速度(OCR)。右:TNBCと⾮TNBC細胞株のXFエネルギーマップ (Guha et al., 2018)。

Agilent Application Note "Targeting Energy Metabolism for Cancer Therapeutic Discovery using Agilent Seahorse XF Technology" より引用

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ヒト胃腺がん細胞のエネルギー代謝への薬剤の影響

Wang et al. (2019) は、ヒト胃腺がん細胞でγ-Tocotrienol (γ-T3) の作⽤を調査し、ミトコンドリアATP 産⽣から解糖ATP 産⽣に向かう著しいシフトを観察しました。更にγ-T3 は、これらの細胞でトータルATP 産⽣速度を減少させました (Fig.1)。


Figure 1:胃がん細胞を0または4時間、30μMγ-T3で処理し、ATP産生速度をXF リアルタイムATP Rate アッセイで計測。ATP産⽣速度の定量により2つの腺がん細胞株における薬物誘発性の解糖のスイッチが明らかになった。


Fig.1の観察に対する洞察を得るため、γ-T3 の存在下におけるミトコンドリアと解糖の機能を直接評価するために更なるアッセイが実⾏されました。Wang らは、XF ミトストレステストを⽤いて、SGC-7901 細胞とMGC-803 細胞の基底および最⼤の呼吸の⽤量依存的な減少と、いずれもミトコンドリア機能障害を⽰していることを証明しました(Fig.2)。


Figure 2:ミトコンドリア機能へのγ-T3の作⽤の⽤量依存性。SGC-7901とMGC-803細胞を記載のγ-T3濃度で4時間処理し、XF ミトストレステストを⽤いて基底および最⼤のOCRを計測した。


更に、解糖の定量化のためXF Glycolytic Rate アッセイを⽤いて、双⽅の細胞種における基底の解糖の⽤量依存的増加も⽰しました(Fig.3)。これらの結果は、ミトコンドリア機能が抗癌剤開発のための有効なターゲットである可能性を⽰唆します。


Figure 3:解糖速度に対するγ-T3の作⽤の⽤量依存性をXF Glycolytic Rateアッセイで計測。SGC-7901細胞(上)とMGC-803細胞(下)を記載のγ-T3濃度で4時間処理し、XF Glycolytic Rateアッセイを⽤いて細胞外酸性化速度を計測した。棒グラフは、基底および補償的な解糖速度の定量的なデータを⽰す。

Agilent Application Note "Targeting Energy Metabolism for Cancer Therapeutic Discovery using Agilent Seahorse XF Technology" より引用

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治療ターゲットとなり得る遺伝⼦変異と代謝表現型の関係を明らかにする

Deribe et al. (2018) の研究は、XF ミトストレステストを用いた計測により、代謝調節のターゲットとして機能する可能性のある既知のがん原遺伝⼦の変異を明らかにした事例を⽰しています。この研究において著者らは、SWI/SNF クロマチン・リモデリング複合体における変異が、肺がん細胞株においてターゲットとなり得るOXPHOS への依存を誘発することを明らかにしました。

最も頻繁に不活性化される複合体サブユニットであるSMARCA4 に⽋陥のある細胞 (KPS 細胞、Fig. A、B) は、ミトコンドリア呼吸を増加させました。SMARCA4 に⽋陥のあるH1299 肺細胞株がSMARC4A で再構成された時 (H1299 SMARCA4)、基底の呼吸と予備呼吸能は減少し (Fig. C、D)、更に、これらの変異した肺がん細胞がOXPHOS の阻害に感受性を⽰すことが明らかになりました。



Figure:基底の呼吸と予備呼吸能を⽤いた、ミトコンドリアの遺伝⼦突然変異の機能的な影響の計測。A) Kras-p53 (KP) 由来の細胞株 (⾚) とKras-p53-SMARCA4由来の細胞株 (KPS、すなわち⽋陥のあるSMARCA4、⻘) からのOCR値のトレース。B) 基底の呼吸と予備呼吸能。 C) H1299の親細胞(すなわち⽋陥のあるSMARCA4、⻘)とSMARCA4で再構成されたH1299細胞株 (⾚) を⽰したミトストレステストのカイネティック・トレース。D) 基底の呼吸と予備呼吸能。

Agilent Application Note "Targeting Energy Metabolism for Cancer Therapeutic Discovery using Agilent Seahorse XF Technology" より引用

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